柴田 友厚
研究技術計画 15(3) 227-240 2003年8月6日
20世紀に創出された主要産業である通信,エレクトロニクス産業などの特徴は,それらの製品がシステムとして認識されることであり,例えばPC(パーソナルコンピュータ)は,マザーボード,キーボード,ハードデスク,そしてモニターなどのサブシステムによって構成されている。そして,このような複数のサブシステムから構成される製品システムは,サプライヤーや顧客などを含めたビジネスシステム内における数多くの調整作業や連携活動などの結果,作りあげられてゆく。本稿は,このような製品システムとビジネス・システムとの間には,どのような関係が成立しているのか,それともそもそも,それらの2つのシステムの間には,いかなる関係性も発見することはできないのだろうか,そのような問いを中心として,2つのシステムの関係性に関する理解を深めることを目的とした探索的な論文である。まず先行研究のレビューから,製品システムとビジネス・システム間の適合関係の存在,という分析枠組みを導出した。それを検証するために,アーキテクチャーが異なる3つの製品システムを選択し,それらの設計エンジニアに対して質問表調査を行った。判別分析の結果から,ビジネスシステムに対するエンジニアの認知構造のみを説明変数として,製品システムを統計的に有意に判別できることが明らかになったが,これは適合関係の存在を示唆するものと理解できる。