伊藤 亜矢子, 松井 仁
教育心理学研究 49(4) 449-457 2001年12月
本研究は,わが国の教育事情に即応し,学校臨床実践における学級の見立てに寄与する学級風土質問紙の作成と,それによる学級風土の記述の提案を目的とした。学級観察や生徒面接,教師コンサルテーションなど実践的な情報を基にして質問項目を作成し(伊藤,1999a),その結果を,欧米の主力な学級風土質問紙(CES・LEI・CAS)の理論的枠組みと比較検討し,実践的情報と理論的情報の双方から質問紙を作成した。21中学校85学級2465名に質問紙を実施し,分析単位問題に配慮して,学級を単位に分析を行い,グループ主軸法によって項目割付の妥当性を検討した。その結果,「学級活動への関与」「生徒間の親しさ」「学級内の不和」「学級への満足感」「自然な自己開示」「学習への志向性」「規律正しさ」「学級内の公平さ」の8尺度を得た。これを用いて学級風土の事例を記述し,質問紙結果から学級の現状や課題を導くことができ,コンサルテーションや教師の学級経営資料として質問紙結果の活用が期待されることを示した。