コロナ禍を経た日本で、デジタル化の遅れを取り戻す動きが盛んになっている。しかし、統計データの制約から IT 投資とそれに伴う人材育成や組織改革を組み合わせた包括的なデジタル化に関する定量的な分析は少ない。一方で従来型の投資ではないクラウド・サービスや生成AIなどの新たな情報サービスの利用形態も現れている。そこで本稿では、統計データの制約の下で、生産に寄与する IT 資産及び IT サービスの計測に関する新たなアプローチを試みる。またデジタル化を政府が推進する背景には、スピルオーヴァー効果の存在があるが、本稿では公的部門と情報サービス産業からのスピルオーヴァー効果に焦点をあてた推計を行う。推計の結果、これらの産業からのスピルオーヴァー効果が確認されたことから、もしスピルオーヴァー効果を重視するのであれば、政府の支援は情報サービス産業を中心にした方が望ましいと考えられる。