梅田 亜友美, 伊藤 汐音, 池田 寛人, 藤島 雄磨
日本心理学会大会発表論文集 84 PD-082-PD-082 2020年9月8日
本研究では,コンパッションと抑うつの関係に対し,コンパッションへの恐れが及ぼす調整効果について検討した。首都圏の大学生136名(男性70名,女性65名,不明1名;平均年齢20.41歳,SD=1.36)を対象に,質問紙調査を実施した。目的変数に抑うつ,説明変数にコンパッション,調整変数にコンパッションへの恐れを投入した階層的重回帰分析および単純傾斜分析を行った。その結果,交互作用項の分散説明率の増分が有意であり(R2=.26, ΔR2=.04, p<.01, β=.21, p<.01),コンパッションへの恐れが低い場合(-1SD)には,抑うつとコンパッションの間に有意な関係が認められ,コンパッションが高いほど抑うつが低くなることが示された(b=-.23, p<.05)。一方,コンパッションへの恐れが高い場合(+1SD)には,抑うつとコンパッションに有意な関係が認められなかった(b=.12, n.s.)。従来の研究では,コンパッションの促進が抑うつを低減することが示されてきたが,コンパッションへの恐れが強い場合には,コンパッションは抑うつに影響しないことが示された。そのため,抑うつの低減のためには,コンパッションへの恐れを緩和することが有効であると考えらえる。