後藤 志緒莉
国語科教育 98 45-53 2025年9月30日 査読有り
本研究では、香川県での研究授業と竹台高等学校との合同研究に関する資料の分析を通じて、増淵恒吉の現代文読解指導の特質を明らかにした。
本研究で明らかにしたことは、以下の2点である。第一に、「課題学習」がどのように展開されていたのかを明らかにした。増淵が実践した「課題学習」では、学習者に事前に提示する設問や教師がその場で提示する発問の解決が学習の中心に据えられていた。また、設問や発問に対する解答をグループで話し合い、発表するという形式で授業が展開されていた。第二に、設問の提示の仕方や配列の特徴を明らかにした。増淵が学習者に提示した設問は、作品の具体的な叙述に即しており、文章の展開に沿って配列されていた。更に、作品の細部を分析的に読解した後に、主題を考えさせることが意図されていた。このような特徴をもつ設問を設定した背景には、文章表現に即した学習指導を重視する増淵の立場があった。「現代国語」が新設された当時の高等学校国語科の教師は、現代文の学習指導に当惑し、指導法を求めていた。そのような教師たちにとって、増淵が提案・実践した「課題学習」は、現代文読解指導の一つの指標となったと考えられる。