藤巻 るり
心理臨床学研究 26(5) 603-614 2008年12月 査読有り
不登校を主訴として来談した思春期男児(14歳)の事例を提示し、心理療法過程とは「人間(来談者と治療者)の関わりによってイメージが受肉し解体する過程」としての視点を試みた。人間の関わりとは、イメージに「入り」それを「生きる」ことと、そのことを「省察する」ことの両方を含む。それは「魂に巻き込まれ」、「本当に騙され」、」そしてそのことを「後の認識」として知るという姿勢を通して可能になる。事例において、「鬼」のイメージを自ら体現しているクライエントに治療者は畏怖の感情を抱くと同時に魅了され、自らもイメージの担い手として面接過程の中に入っていった。こうしたイメージは、心理療法過程のなかで生きられることで「受肉」し、変容し、さらに治療者の自己省察であるこの論考のなかで論理へと「解体」していった。ここでは心理療法過程を人間とイメージとの弁証法的で「底無し」の関わりとして見る視点が提示された。