宇野 舞
流通研究 28(1) 3-18 2025年7月 査読有り筆頭著者
本論文は,営業・販売組織の多様性を捉え,B2B市場において事業戦略に沿った顧客の取捨選択と,新製品開発への顧客関与の促進に寄与するような組織の特徴を明らかにする。近年のB2B市場では競争優位獲得のために顧客との共創関係がますます重要になり,それに伴って戦略的販売の重要性も増している。欧米で提唱された戦略的販売は企業の戦略的意思決定に関与し,選び抜いた顧客との価値共創を促す組織を指し,従来はマーケティングの担っていた戦略策定領域を侵食してきた。一方で,日本では営業が欧米におけるマーケティングと販売の意味を含み,戦略的販売と類似した特徴を持つ。営業・販売組織の分類を構築した先行研究は,マーケティングとの従来型の分業を前提としてきた。しかし営業・販売組織の役割の変化と戦略領域への拡大を考慮し,営業・販売組織の在り方のグラデーションを捉えることが求められる。そこで本論文は,先行研究から導き出した戦略的販売の特徴を表す9つの変数を用いてクラスター分析を行う。分析の結果,5つのクラスターが特定された。