野口 菜実
箱庭療法学研究 37(3) 37-44 2025年
星と波テストの考案者は,特殊なサイズの用紙(ほぼA5サイズに相当)を使用することを指定しているが,その用紙サイズが描き手にどのような影響を与えるのかについての研究は,行われていなかった。本研究は,その影響を実証することを試みる。実験参加者は,青年期成人40名とし,A5とA4の2枚の用紙を用いて,星と波テストをそれぞれ1回ずつ実施した。実験参加者は各描画実施後に,自身の描画に関する印象評定と,用紙サイズに関する自由記述を行った。用紙サイズを独立変数として,印象評定を従属変数として分散分析を実施した結果,印象評定に有意差が見られた。実験参加者は,A4よりもA5で,より描画の風景に入り込み,いきいきとした表現ができたと感じていたことが示された。また,自由記述をKJ法で分析した結果,A5では「安心感」や「内的世界をイメージとして表現できる」「ファンタジーな表現になる」一方,A4では「緊張感がある」などの記述があった。以上より,星と波テストにおいては,A5を用いることで,描き手のより情緒的な表現を引き出すことが明らかになった。