板倉 明子, 荒川 一郎
表面科学 13(8) 448-455 1992年
原子的に均一かつ平坦な表面に物理吸着した気体分子の系は,その相転移において2次元的な振舞いを示すことが知られている。吸着平衡測定,熱量測定,X線,粒子線回折などの手段を用いて,この系の熱学,統計力学の実験的な研究が行われてきた。これまでは実験上の制約から,異なる系,異なる手法での結果を互いに比較することは困難であった。偏光解析法は,測定圧力などの実験条件の制約が少なく,実験対象の選択の自由度も大きい。偏光解析法を測定手段として用いることによって,異なる吸着媒上の2次元系の広い範囲での相図を比較対照し,下地の影響などを議論することが可能となる。また,厚い物理吸着相の有力な観察手段となる。本稿では,物理吸着系の研究における偏光解析法の特徴と役割を紹介し,現在までにグラファイト単結晶表面および金属単結晶表面で得られた研究成果を紹介する。