鈴木 健一
日本文学 60(10) 2-11 2011年10月 査読有り
<p>江戸詩歌史を構想するに際しては、上限を一六世紀初めまで遡らせ、下限を一九世紀末まで引き下げることも十分検討に価しよう。また、最も重要な結節点は一八世紀中頃から後半にかけてにあると考えられる。つまり、江戸詩歌は上品で優雅な作品に加えて俗の要素が拡張する前半期と、日常性が台頭し、口語化、大衆化の促進する後半期に分けられるのである。そのような中、ジャンルの越境も相俟って、和漢や雅俗の区別が曖昧になり、渾然一体となったところに、近代となって新たな対立軸の洋が生まれてくる。</p>