和田 哲夫
学習院大学経済経営研究所年報 第25巻 73-81 2011年
1)経済学・経営学において特許引用はきわめて広範囲に利用されているが、ネットワークと してみたときのクラスタ性には実証検討が進んでいない。そこで日本特許について、クラスタ 性の一側面である推移性(transitivity)を中心的な関心におき、ERGMを含むネットワーク分 析を試行した。2) 日本の審査官特許引用と発明者特許引用それぞれ全体を方向付きネットワークとしてみた とき、後者の推移性指標は、前者よりも高い。3)引用ネットワークをマルコフ・グラフとみなし、推移的トリプル数・同一出願人に属する 引用ペア数・同一国際特許分類クラスに属する引用ペア数をそれぞれネットワーク指標とし て扱って、統計分析ソフトウエアR環境上のergmパッケージによる検証を限定サンプルにお いて試みたところ、個々の特許引用に3つの指標は正の影響を与えていると観察された。